第5章 マーケティング理論の活用
(1)マーケティングの発展
「よいものを造れば売れる」、手工業から家内工業へ、さらに産業革命を経て機械工業の時代となっても、品質や性能を追及することは、販売のために最も大切なことでした。
よい品質が、大切なことであることは、今でも変わりはありません。
しかしながら工場生産が発達して、よい品質のものが大量に造られるようになりますと、品質がよいだけでは、生産される大量のものを売るには不十分な時代に入りました。
売るための工夫が必要になって来たのです。
そこで大量生産方式を生み出した米国では、販売のための技法を追求する、マーケティングという方法論が生まれ普及しました。
第二次世界大戦の終結によって、膨大な軍需生産の縮小を迫られたことからも、拡大した生産能力に見合う、販売力の強化が求められたともいわれています。
この考え方は、マス・マーケティングと呼ばれて、1960年代の終わりまでの間、大きな成功を収めました。
この頃の考え方の中心は「より多くの人を対象として、同じ商品を、あらゆる所で販売する」ことにあり、「宣伝、広告を大規模に行う」ことにあります。広告の手段としてのテレビの普及によって、その効果は目覚ましいものになりました。
マス・マーケティングは日本にも導入されて、高度成長の時代を作り出すための、一役を買ったともいえると思います。「消費は美徳」といわれたような経済の拡大と、テレビに代表されるマス広告媒体の発達が、その成功を支えてきました。
米国では1970年代から80年代にかけて、物あまり現象がみられるようになり、対象を次第により狭い範囲にしぼり込んで売り込むために、マーケット・セグメントの技法が開発されるようになりました。
広告媒体については、それまでのテレビが主力の状況から、ケーブルテレビや各種の専門誌が使われる傾向が強くなって行きました。
日本でもやや遅れながらも、物ばなれといわれる時代を迎えて、セグメンテッド・マーケティングの技法を取り入れるようになっています。消費者の変化にあわせてマーケティングの方も、より有効な販売方法を求めて変化してきているのです。
ところで、皆さんは、この数年の間デパートの売り上げが伸びずに、コンビニエンス.ストアーと、通信販売が業績を伸ばしていることをご存じだと思います。
いま一部の通信販売業者が取り入れているマーケティング技法が、米国で近年成功を収めている新しい考え方に基づいたものなのです。
この技法は、ダイレクト・マーケティングという呼び名にはじまり、データベース・マーケティングと言われ、さらにはワン・トゥ・ワン・マーケティングといわれています。
この技法の特色は、これまでのマーケティングの、中心的な目標とされてきた不特定な多数に対する大量販売ではなく、逆に一人ずつのニーズを把握して、製品やサービスを提供しよとする考え方です。
市場シェア獲得を直接の目的とせずに、一人ずつの顧客についてのシェアを追及するもので、顧客満足度を高く保つことを目標としており、顧客シェアの増大を、市場シェアの上昇につなげて行こうというものです。
したがって基本的には、対顧客関係を大切にする昔からの販売技法と変わらない所に戻って来ています。
ただし、リレーションシップ・マーケティングといわれる古典的なものとの違いは、個人、個人のニーズを的確に把握するために、コンピューターの情報技術を大いに利用している点にあります。またそれによって、非常に多くの数の顧客の満足度を高く保とうとするものなのです。
新しいマーケティングは、生産者本位の考え方であった、これまでのマーケティングを根本から変えて、消費者本位の考え方を新しいテーマとして登場して来ているのです。しかも、それはコンピューター・テクノロジーの発達と深いつながりを持っています。
(2)証券会社のマーケティング
(部分抜粋を掲載)
米国生まれの、販売力強化のためのマーケティング理論は、これまで証券業界ではあまり活用されることはありませんでした。
マーケットといえば「ストック・マーケット」証券取引所のことかというような、理解度の人が多かったのかどうか判りませんが、マス・マーケティングの時代にも、テレビ広告の主流の商品は、株式型か債券型の投資信託であり、株式投資については大量販売といわれた時代においても、広告を多用した販売は見られなかったと思います。
投資資金の単位が比較的に大きな株式投資は、「すべての人」を対象とするには向かず、同じ商品をあらゆる店舗で同時に売り出すことは、大規模な株式の売り出しや、公募増資については行われましたが、実際の勧誘活動は選ばれた顧客層に対するものであったと思います。
その意味では銀行業界と並んで、証券業界はマーケティングには、これまであまり関心を持たなかったのではないでしょうか。
マス・マーケティングはさておいても、マーケティング理論はその後さまざまに発展して、販売に関心を持つ人にとっては、役立つことが非常に多くなっています。
それでも会社の方針としてマーケティング理論の活用を推進している証券会社は、ごく一部を除くとあまり見当たりません。
しかし、これからの証券営業を考えると「マーケティングの理論と技法」の活用は、極めて重要なテーマであると思います。
例えば、新規開拓は証券営業にとって極めて大切なことなのですが、一件の新規顧客を獲得するためのコストと、既存顧客一件を維持するためのコスト比較などは、日本の会社では通常はあいかわらず行われていないと思います。
米国ではとうに分析されており、新規開拓には通常5倍のコストがかかるといわれています。
商いがあっても、なくても既存顧客の管理には一定のコストはかかります。
このところ、株式顧客の総点検を経営方針として打ち出されたところもありますが、大方の営業員は、自分の背番号のついた既存顧客の維持に手間をかけていず、会社もまたコストを意識した営業の方法論を、つきつめていないのではないでしょうか。
「最新のマーケティング理論」によれば、既存顧客の維持管理が最重要の課題となっています。顧客の満足度を高めて、生涯にわたる取り引きを継続し拡大することが、考え方の中心になっているためです。
証券人口が近年は減少していることから、証券会社の営業員一人当たりが管理しなければならない口座数は増える一方でした。有効な管理方法が開発されないままに、既存顧客の休眠状態は拡がっています。多大のコストをかけて作った顧客口座も、維持するための方策が立てらず、行動されないままに、やがて取り引き不能となる危険性があると推察されます。
個々の営業員に預けられ、任せられた形になっている休眠口座を覚醒するには、組織的な方法論を確立して、営業活動をより効率的に行うことが必要です。
電話をかけ資料を送りさらには訪問し提案を行う。顧客と接触する実質的な時間を、如何に増やせるかが重要です。それらの総ての作業に、パソコンを使えるようにして、効率良く営業活動を行うことが、これからの目標となります。
日本の証券業界でも、株式の大規模推奨と大量販売の手法が有効であった期間はかなり長く続きました。その大量販売の技法は、次第に進歩しながら、高度化して来たと思われます。
正確にはそれは、マーケッティングの考えに基づいたものではなかったかも知れませんが、市場と株価をリードする力を示したことは間違いありません。
しかし、近年にいたって、多品種少量生産の必要性が進んでいるように、投資家側のより高い欲求を満たすために、販売の仕方を考えるマーケティングの手法も変化させ発展させなければなりません。
顧客との関係「リレーション」を重視し、大量の顧客数を追及する前に、特定の顧客の継続的な取引による、量の極大化をはかるという手法です。
これは一見すると、商人がお客様を大切にする古くからの営業手法と似ていますが、顧客との取引を総てコンピュータで管理して、投資行動の傾向やパターンを分析して、受け入れられやすい提案や勧誘を行うという点で大きく異なります。
米国では、アメリカン航空の多重利用客への優待サービスが、最初の大成功を収めました。いまではどこの航空会社も取り組んでいますが、飛行利用距離に応じてその距離の多いお客様に無料の飛行をつける、割り戻し条件とも言うべき販売方法は、大成功をもたらしました。アメリカン航空は、業界第1位の地位を占めるにいたりました。
2割の客が8割の利益をもたらす、昔からある「2対8」の法則を、コンピューターによる乗客の搭乗記録の管理によって追及し、自社の便への指定搭乗を、大幅に引き上げたのです。
以来、他の業種にも同種の販売技法は拡大して来ました。今、米国では、金融や証券の中でも、この手法の利用が始まっています。
「ワン・ツー・ワン マーケティング」とも「データ・ベース・マーケティング」とも呼ばれているこの営業手法は、日本でも実施会社は確実に増えて来るでしょう。
従来、証券会社のダイレクト・メールの返信率は、あまり高くないとも聞いておりますが、送る対象や提案商品について、これからは新しいマーケティング理論と手法を、利用するところが出てくると思います。すでにこのマーケティング手法への都市銀行の取り組みも、報道されるようになっています。
パソコンをうまく使えば、個人の立場でも同様の営業方法は可能です。部店単位や会社全体で利用すれば効果は更に大きくなることは当然ですが、その場合には対象を選別したり提案商品を決定するプランを考える人、「プランナー」と呼ばれている人が、必要かつ重要な役割を持つことになります。
バブルを過ぎてリストラが手詰まりになれば、経営の目指すものは、生産性向上の工夫へと向かいます。アウト・ソーシング(外部委託)による効率化への追求は管理部門に止まらず、さらに進むでしょう。
マーケティング技法を活用した、「営業の効率化による生産性の向上」もまた中心的な課題となるでしょう。
パソコンをどの様に営業に役立てるかが、個人にとっても会社にとっても、ますます重要になって行くと考えられます。
これからの証券営業のマーケティングの方向について少し考えてみましょう。
これからの株式投資の主力となってくるであろう投資家層は、そこではなく、別の層にいるのではないでしょうか?
特に50代はベビーブーム層と呼ばれて以来、常に大きな変化を引き起こして来た人達なのです。株式投資の最適齢期に入っている、この年層を意識しない証券営業は考えられません。
また、パソコンや通信の業界の周辺には、米国だけではなく日本でも速い成長が見られます。それらの企業と周辺の仕事を手がける人達も、一定の層として、株式投資に関心を高め、成功の機会をうかがっていると考えます。
店頭登録や上場によって大きな成功を収めた人達が、すぐ近くに見える訳ですから関心を持たないはずはありません。
営業活動の対象を「セグメント」して働きかける方法は、依然として有効でしょう。
また一方では、高齢化社会が進行することは、一番間違いの無い未来予測です。
日本の年金制度が、その間違いの無い予測に対応できるようにはなっていないことは、知ってる人は随分と前から判っていることでした。しかしながら現状は、大きな問題ほど先送りされてしまう通例の通りに事態は進んでいます。
長年にわたって積み上げて来た年金が、自分達の老後を必ずしも安全なものとしてくれるとは限らないことを感じる人は、様々な報道により近年急速に増えているでしょう。
「水は高きより低きに流れ、金は低きより高きに流れる」、これが金利の水準によるお金の動きの原則であり、その前は「安全を求める」という大原則があります。
この原則を乗り越えるることはありません。「何が安全なのか?」を考える方向へと動き始めていると思います。
長期にわたる極めて低い国内の金利水準から、より高水準の海外に向かってのお金の流れは、次第に増加していると考えられます。
為替水準の変化と見通しについてのマスコミ報道の主体は、依然として生産者の視点からのものが多いにも関わらず、個人の資産の視点から考える人の数は増え続けています。
日銀券の発行残高が高まったり、国際収支の動向の中に、従来の考えでは説明できない動きが出て来ているのは、どういうことでしょうか?
為替レートの変動への理解も進み、海外金利の動向への関心も高まり続けます。
年金制度の行きづまりから被る影響を、打開しようとする個人努力や指向も増えてくるでしょう。政治も経済も大きく変わろうとしている時代を背景にして、商売の道もまた大きく変わって行くのだと思います。
見込み客リストを見直すことは大切です。
データ分析を行うか、充分に行えない場合には、仮説を立てて、層に対するマーケット・テストを広く行い、反応によって絞り込むような方法もあるのです。
その様な営業活動がパソコンの利用によってのみ可能になります。
第6章 対顧客連絡と日程管理への活用
(1) 対顧客連絡の改善
(部分抜粋を掲載)
A 電子メール
パソコン通信やインターネットを使った、「電子メール」という機能は、これまでの道具には無い特徴を持った便利なものです。
お客様との連絡や、見込み客への接触は、これまでは郵便と電話に限られていました。すでに一部ではファクシミリをお使いかも知れません。既存のお客様の場合には、電話での頻繁な連絡の必要な時もあるでしょう。証券会社の電話の回線使用料は他の業種に比べて、とても高い水準にあるようです。
電話では、話し中、会議中、外出中、出張中等々で、なかなかご連絡や報告ができずに、いらいらしたり困ったりした経験は、どなたもお持ちだと思います。
今では留守番電話も大分普及しましたが、自分の連絡を取りたいお相手への伝言録音を、確かに聞いていただけたかどうかを、確かめる方法はありません。ボイスメールという機械装置がありますが、まだお使いの方は少ないと思います。
代わりの人がいて伝言を頼んでみても、正確に間違いなく本人に伝わる保証はありません。
電話をかけるには、時間も考えなければなりません。早朝や深夜はよほどの急用か、喜んでいただける内容でなければ失礼でもあり、ご遠慮しなければなりません。その点「電子メール」はお相手に確実に届き、それを確認し、送信文を記録しておくことができます。
「電子メール」早く、安く、簡単に、かつ確実に、時間の制約無しに文書を送ることができる点では、非常に優れた方法です。
同一の文書でしたらば、複数の人に同時に送信することもできます。また発信も受信も、時刻を含めて記録されます。この機能はお客様との連絡には非常に便利ですから、米国では活発に使われているようです。
日本ではお客様の方が、まだご利用でない場合が多いのが難点ですが、ご利用されている方には、電子メールを使った連絡は、必ずお喜びいただけるでしょう。
インターネットやパソコン通信を使った営業活動は、もうすでに一部で始まっています。利用者の数は次第に増え続けるでしょう。やがてはこの機能を使わずには済ませられない時がくるのではないでしょうか?
「電子メール」は今のところ日本では、社内のコミニュケーションを改善して、仕事の進め方を効率的にするような方向での関心が先行しているようです。「イントラ・ネット」と「サーバー」の広告の増加がそれを示しています。
B ファクシミリ
(部分抜粋を掲載)
もう一つ、最近普及が進んできたファクシミリの活用は、すぐにでも可能です。
まだお使いでなければ、積極的に活用するのがよいと考えます。
商売をしている人で、ファクシミリを使っていない人はもう殆どいないでしょう。個人や家庭用の機種も低価格化しましたから、電話回線は電話と兼用であっても、自宅に置く方も増えています。
ファクシミリは受信用紙が機械の中から出てきますから、着信を見過ごすことはありません。盗聴の危険も極めて少ないのです。しかし、個人の秘密にしておきたい文書は送れません。着信した用紙に書かれた文書は、ファクシミリの機械に近づける人は誰でも内容を読むことができるからです。
受信する側でカバーの付いた用紙を使うことで、通信内容を隠す技術が最近開発され販売も近いようです。コストが問題ですがこのような商品が出てきたことには注目して置く必要があります。
パソコンでは、このファクシミリ機能を使うことができます。ファクシミリは、複数の相手に同時に同じ文書を送ることもできますし、郵便に比べれば早くて安い連絡方法です。パソコンを使って直接ファクシミリを送受信すれば、読みやすくきれいな文書で、グラフや表も簡単に送ることができます。送受信の記録も残ります。
今まで手書きで原稿を書いて、ワープロで清書して貰ってから、校正して修正してもらい、さらにファクシミリ機のところへ行って送信していた作業が、机に座ったままで総てできてしまいます。送信文書をファイルして保存する必要もありません。パソコンの記憶装置に総て保管されますし、必要に応じてすぐ取り出せます。
ファクシミリは、商売をしている人にとっては、もう欠かせない道具になりました。
ビジネスマンの名刺には番号が記入されているものが多くなりました。
家庭用の機械の値段も随分と安くなりました。証券投資をなさる方にとっては、購入をためらうほどの金額ではありません。まだお使いでなければ、ご利用をおすすめしてもよいでしょう。
しかし、ファクシミリを利用するにしても、早くて的確な投資情報の提供に努めるかどうかは、おすすめする側の取り組み方にかかっています。
電子メールは新しい手段として加わったのです。時差のある海外との交信などには抜群の威力を発揮します。やがてお客様の海外出張や旅行の時の必携品となるでしょう。
通信機器の発達は早いですから、やがて静止画像からはじまって、動く画像を相互に送ることのできるテレビ電話で、資料の送受信もできるような機械が現われるでしょう。
重要なことは、新しく出て来た機械や道具を、自分の目的に合わせて工夫して、どんどん使ってみることなのだと考えています。
(2) スケジュール管理による効率化
(部分抜粋を掲載)
週間、月間、年間と仕事を進めるためには、何処の組織も誰でもが、予定表を使っています。仕事をしている人で、手帳を持たずに済む人はまれでしょう。
システム手帳のように情報量の大きなものや、電子手帳もあります。携帯性と価格では従来からの手帳が優れています。しかし、パソコンもまた数々の優れた点を持つ道具なのです。
打ち込みは一度だけで、様々な角度から見ることができるのです。
用件の検索(探し出し)も簡単にやってくれます。約束の日時が見つからずに、手帳を何回もめくり直すような作業とは無縁です。計画を立てて着実に仕事をこなして行こうと考える人には、こんなに便利な道具はありません。
先々の計画だけではなく、過ぎたことを記録するためにも優れた道具になります。
(3) 時間管理の基礎習慣
(部分抜粋を掲載)
仕事は常に時間との競争です。
大都市圏では通勤時間も相当の時間がかかります。時間の無駄を如何に少なく、最小に押さえるかは大切な問題です。
証券営業は、お客様の生活時間帯に合わせなくてはよい営業活動はできませんから、朝は早く、夜も遅くなることがあります。営業目標に達しないための残業も多いのが通例です。それだけに、時間の管理と営業の効率化は大切です。
日程の管理では、月間の予定を立てて、週間に引き直して、日々の行動のおおまかな計画ができたらば、一日の間にどの様に行動するか、時間配分を必ず検討する必要があります。
一度やってみれば、お客様に何らかの方法で直接に接している正味の時間が、いかに少ないかが判ります。
(4) 記録は記憶にまさります。
(部分抜粋を掲載)
日程管理と時間管理のために使用したデータは、そのままでも保存しておけば、自分や組織の活動記録になります。たとえ一行でもメモを追加しておけば、更によい記録になるでしょう。
自分に都合の悪いことになると、にわかに「記憶していません」という人は多いのですが、本当に記憶力に自信の無い人や、前には自信があったけれども、最近はどうもという人には、パソコンはとても役に立ちます。
一番よく使われていて便利な手帳も、一年に一回は新しいものと取り替えなければなりません。一年で区切られていますので、その年の後半に、翌年の予定を書き入れたり、逆に年前半に、前年の記録を見ようとすると、具合の悪いものです。
検索を指示すれば、先の予定でも、過去の記録でも、瞬時に表示してくれます。
この機能の営業活動への利用は、様々なことが考えられると思います。
大型のコンピューターに新しい仕事をしてもらう場合、仕事の現場の人とシステムを担当する人の、相互理解の難しさに悩んだ経験のある人には、実感があると思いますが、パソコンのすごいところは、現場で仕事に実際に使う人が、使い方を考えることをできることなのです。
第7章 投資情報の収集への利用
(1)情報収集に必要な準備と操作
(部分抜粋を掲載)
ここでもう一度、情報収集のために必要なことを、整理してお伝えします。
(A) 通信モデム
(B) 電話回線
(C) 通信業者との契約
(D) インターネットへの接続
最近ではこの段階までメーカーがセットしていて、買えばすぐインターネットが使えるという、パソコンの広告も見かけるようになりました。
(2) 電子情報には何があるか
(部分抜粋を掲載)
投資や投資の勧誘に役立つ情報は、パソコン通信やインターネットの中に、山ほどあります。どこにどの様な情報があるのかを、まずお伝えしたいと思います。
電子情報の問題点は数が多過ぎることにあって、どこに何があるのかを見つけるのが大変なのです。このためにインターネットについては、電話帳のイエローページのような索引が、本になって売られていますが、紙を使った出版物では、次々と新しい情報の発信者が増え続けるために、すぐに陳腐化してしまいます。
ソフトバンクと提携したYAHOOなどは、どこにどんな情報があるかを探す仕組を考え出して、成功し上場した会社なのです。今ではこの「サーチ・エンジン」といわれる、インターネット上の情報検索を商売にしようとする業者の、新規参入も続々と行われています。
(A) パソコン通信の情報
(B) インターネットの情報
日本版Yahoo(ヤフー)を使って、日本語の情報を探す方法から始めてみましょう。
その下に「キーワード」を打ち込む短冊状のスペースがありますので、「証券」と打ち込んで検索をして貰います。 しばらくすると検索結果として、証券関係のホームページのリストが表示されます。
(3) 国内情報
(部分抜粋を掲載)
総合研究所は証券系だけではありません、色々な研究所と比較しながら読むこともできます。
マクロの数字に関しては、経済企画庁はじめ官庁もそれぞれの所管事項について発信しています。経済企画庁は必ず立ち寄るページでしょう。
これらは総て無料で見ることができますし、自分のパソコンに写しとることができるのです。
証券会社は証券会社で、また少し違う角度からの情報を発信しています。 株価情報は大引け値のみを16時の発信ですし、決算情報も発表後(12時間経過後)の発信ということで、東京証券取引所の方針に従っています。
証券会社からの発信はまだ22社かと思いますが、四社をはじめ中堅、外資系、銀行系、地方会員と様々に工夫をこらして発信しています。 週間や月間のレポートはもとより、上場各社のホームページとの接続をできるようにしたり、株主優待情報や新規公開の情報を掲載したりで、情報の内容についての競争はこれから次第に激しくなると考えられます。
口座を開設して、株式売買を行う制度の運用も始まりました。これからホームページを持つ証券会社は増えると考えられます。
情報の入手は、パソコンでインターネットに接続することによって、とても簡単になったのです。
図書館や閲覧所に足を運ばなくても、沢山のページを何度もめくらなくても、自分の机の上で座ったまま指先を動かすだけで、必要な情報を入手できるということは、時間と効率の面だけを考えても大きな変化です。
インターネットは世界につながっていますから、海外情報の収集のための出張は、事前にインターネットで調べれば、行かないでも済むこともありえます。
(4)海外情報
(部分抜粋を掲載)
国内の情報はまだどこも、発信者の側に試行錯誤の感じが大分ありますが、海外特にアメリカは、さすがに進んでいます。
取引所も発信に熱心です。タイムリー・ディスクロージャーとしては、時差の五つもある国ですから、インターネットが最適の手段であるという事情もあるでしょう。
日本経済新聞を毎朝、最初に読むのはニューヨークにいる人だといわれますが、報道機関によっては、24時間絶え間無く、新着情報を発信しています。 安い翻訳ソフトを使っても、飛ばし読みでも、日本の新聞とは異なる情報を見つけることができるでしょう。記事内容や取り扱いの仕方についても、日本の報道機関との違いが随分とあるものです。
インターネットの英語の文章を、日本語に翻訳してくれるソフト・ウエアは、随分と安く提供されるようになりました。何年か前は何百万円という水準でしたが、今では一番安いのは7千円台から、2万円台、3万円台と個人でも買える水準でいろいろとあります。
もちろん高い方が性能はよいのでしょう。しかし大ざっぱな翻訳であっても、大体の見当をつけるのには役立つと思います。英語に自信のない場合でも、あきらめることはありません。
まず手始めに「ウオール ストリート・ ダイレクトリー」という証券関係のホームページを集めて掲載しているところをのぞいて見ましょう。
最初の目次のページでまずうなります。 なんと28項目におよぶ、情報分類の表が出てきました。アナリシス・ツールス、アドバイザリー・サービス、ブローカレージ・サービス、マーケット・レポート等々、ずらっと並んでいます。
そこでアナリシス・ツールスのボタンを押すと、また25種類ものアナリシス方法の分類が並んでいます。アルファベット順に並んでいるのですが、先頭はAstological Analysis(アストロジカル・アナリシス)とあり、なんと占星術による予測です。 もちろんファンダメンタルという項目もあるから安心して下さい。
試しにCandlestick Charting(ろうそく 罫線)の項目に矢印を当ててボタンを押しますと、これまたアルファベットの頭文字で選べと云うぐらい沢山あって、37の情報ページがあります。
その中からまた選んでボタンを押すと、人の顔の写真が出てきたりして、その情報を提供している人や機関の説明があり、サービス内容の説明があります。 これは証券関係のページに限らないと思いますが、多くのページでまず内容の説明があり、Free(無料)で見ることのできる情報を出しています。つまり、見本のようなものです。そしてさらに詳しい内容を見る価値があると判断した人は、有料で見るための申し込みをする仕組みになっています。
情報はタダ、とういう習慣の強い日本と違い。医者から(薬は貰わずにです)診断を受けただけでも有料、という習慣が確立していますから、儲ける方法や情報をタダでくれる人はいませんし、お金を払うのが当り前なのです。 そのかわりによい結果が得られなければ、誰も買ってくれる人はなくなりますし、評判が高まれば、多数の人が集まって来ます。
とにかく膨大な情報量ですから、営業をしながら、どれが使える情報かを探すのは、特に海外については大変です。役立つ情報の出ている「ホーム・ページ」を口コミや早耳にたよって探し出したり、情報検索を専門にする人に頼らなければならないかも知れません。
(5)情報の一方通行の終わり
(部分抜粋を掲載)
ここまでは、発信されている情報を読んだり、コピー「ファイル転送」したりするだけで、テレビを見るような情報の受け手としてだけの話でした。
パソコンによる通信では、こちらからも情報を発信できることが大きな特徴です。 双方向性であることこそが、この技術革新が経済活動に止まらず、総ての人間の生活に大きな影響をもたらすものと考えられている理由です。
インターネットの殆ど総てのページには、発信者へのメールを受ける場所の表示があります。こちらから質問や意見を送くることができます。
ネット・ニューズのような伝言板機能を使えば、同一種類の情報に関心のある人達との間で、情報や意見の交換も手軽にできるのです。申し込み書に自分のことを記入することが必要な場合もあります。
上場会社も、インベスターズ・リレーション(IR)活動によって、投資家に自社と自社製品への理解を深めようと努めはじめています。 印刷物を郵送するような手間と経費をかけずに、ホームページを利用する動きは拡がるでしょう。証券会社が中継ぎしなくても、決算速報も自社で発信するやり方が拡がると考えられます。
現に、今年の就職戦線では、求人情報をホームページにのせる会社が急増していることから、大学の就職部では学生のためにパソコンを、急遽増設しているところが出てきました。通年採用の拡がりもあり、これまでの就職協定の枠の中では考えられない動きが拡がるでしょう。
企業調査をする人も、いちいち時間の約束をもらって訪問をしなくても、調査取材が相当程度まではできるようになるでしょう。
このように考えれば、自分の提案する投資に自信を持って投資家に届ける方法についても、このパソコンにより発信する方法が、これから拡がることは確かでしょう。このことは米国の現状を見ても判ります。
「相場を通すだけでは営業にならなくなる」とは、しばらく前からいわれてきたことですが、今後はますますその傾向は強まると考えられます。
電子情報の分野では、情報内容のことを「コンテンツ」といいます。これからの営業の競争は、まさにこの「コンテンツ」の戦いになるのでしょう。
第8章 情報の整理・分析・加工への利用
(1)情報の整理と整頓
(部分抜粋を掲載)
集めた情報は、まず自分のパソコンに記憶させます。
電子通信でコピー(ファイル転送)したものは、見出しと月日を付けて、収納すればよいのです。もちろん、自分で書いたり作ったりした情報も保存します。
新聞とか雑誌とかの印刷媒体からの情報も、一緒に電子化して、記憶装置に収納することもできます。
整理の仕方については、世評の高い本がありますから、お読みになるとよいでしょう。野口悠紀雄教授は「時系列整理」の提唱をされておられますが、私は大分類は系統樹的な方法を残しておいて、野口教授の方法と併用させていただいています。
整理なんて、どのような方法でもよいではないかと、お考えの方もおられるかも知れません。しかしパソコンは、自分の頭脳で可能な範囲よりも、はるかに大量の情報を収納し記憶しておいてくれるのです。そのために、整理の方法を自分なりに確立して置かないと、いくら検索機能があるとはいえ、「捜し物」に無駄な時間を費やすことになります。
「机の上が散らかっていないと、自分の考えがまとまらない」というタイプの人も、パソコンの情報処理については、整理整頓を習慣にすることになります。作業能率の差が思考能率の格差に結びついてしまうからです。
(2)情報の分析から発想へ
(部分抜粋を掲載)
世界でもっとも早い時期から、情報分析にコンピューターを利用しているのは、CIAではないかと思います。
分析などというと、学生時代の微分積分を連想したりして、「俺は営業だから関係ねえだろ!」と腰の引けてしまう人も多いかと思いますが、難しく考える必要はありません。
情報分析の基本的な方法は、集めたデータを時系列に並べたり、共通の名前で検索してまとめたりする、単純なものだと思います。
人間の記憶力を超える大量のデータの中から、時間の経過に沿って並べてくれたり、関連するデータを抜き出したりと、コンピューターには、時間の経過による記憶の減少がないために、そのようなことを短時間に処理してくれます。
一見すると何の意味も持たないようなデータも、幾つかを集めて並べてみたり、積み重ねたりすると、そこから全体の姿を類推をしたり、発見するための、新しい根拠を見つけることが可能となります。
業績、株価、出来高、業種別・企業別の情報などを、整理して記憶させてあるものを、様々な角度から並べ変えたり抜き出したり、グラフ化したりして眺めてみます。そこに新しい発見や、考えるためのヒントが生み出されて来ます。
パソコンは単純作業を助けてくれる道具だけではなく、発想という、より高度の頭脳の働きを助けてくれる道具にもなるのです。
数字のデータを元にしてグラフ化してみたり、罫線で日足、週足、月足と比較するように、期間を変えて、合算して比較をするなどという、電卓ではとても手間のかかる作業を、瞬時に処理することもできます。
「発想法」といわれるものの考え方の中には、対象を拡大あるいは縮小して考える、反対側から考える、共通項を並べてみるなどの様々な方法があります。
「証券分析」についても、学問的な本は沢山ありますが、難しく考えずに、基本は外さないようにしながらも、気軽に自分で考える習慣を持つことが大切なのだと思います。
営業に関して申し上げれば、平凡な分析による予測では、投資勧誘の効果は挙げにくいのです。
(3) 情報の加工の仕方
(部分抜粋を掲載)
情報の加工とは、自分に都合のよいように、情報を歪める作業をするということではありません。 情報の収集と分析によって導きだされた、自分の予測や考えを、投資家の理解しやすいようにまとめたり、読みやすい文章をつけたり、グラフや写真などを使用して、情報素材はそのままに、料理の盛り付けのようにきれいに読みやすくすることを指します。
インターネットやパソコン通信から、コピー(ファイル転送)した情報素材は、自分のパソコンの画面に表示できます。全文を利用して紹介することも、その内の一部分を切り取って使うこともできますから、自分で文字や数字を打ち込み直さなくてもよいのです。
その情報素材を使って、さらに自分の考えを追加して打ち込めば、情報資料を素早く作ることができます。貴方自身のオリジナルな資料が作れるのです。手書きとハサミと糊での作業に比べると、スピードも読みやすさも、素晴しい仕上がりになります。
情報素材の加工は、電子情報から得たものには限りません。
お客様の興味を引き付け、関心を持っていただけるけるような資料を、どのように作るか、「プレゼンテーション」といわれる説明の技法は、これから本格的に進歩をすると思います。
このプレゼンテーション資料を、与えられたものではなく、自分で作ることができるか、できないかは、営業力の大きな格差になるでしょう。
(4) 情報判断への利用
(部分抜粋を掲載)
投資の判断に限らず、人間が何かを判断して実行に移すためには、判断のための材料となる情報が必要であることはご承知の通りです。
しかし、判断のために必要だとされる、情報の量と質さらに幅は、人によって実にまちまちであることは、よく考えて置きたい事実です。
株式投資について、例として二つの極端なケースを考えて見ましょう。
営業活動をする側は、どの水準の情報提供も可能なように、情報素材を持ちながらも、お相手によって、理解と判断のいただけるような情報に仕立て上げることが大切です。 要点をうまくまとめた資料と説明が、如何に効果を示すものか、また反対に、そうでない資料と説明が、如何に営業活動の無駄を生み出すかは、考えなければなりません。
情報素材を数多く持ちながら、お相手の必要とするであろう説明資料を作り、適切に使えるようにすることが目標です。これは簡単なことではありません。
パソコンの力を借りなければ、個人の努力では、難しいことであったと思います。 手作業では、仮にできたとしても、常時ということではなく、ここ一番という時だけでしたでしょう。
従来の手仕事の方法では、とにかく時間がかかりすぎて、効率に問題がありました。「鶏を割くのに牛刀を使う」ようなことは、避けなければなりません。
(5) 情報の提示を上手にするには
(部分抜粋を掲載)
新聞広告、折り込みチラシ、ダイレクト・メール、ポスト・イン、ファクシミリ、電子メール、さらには持参して訪問、あるいはご来店と、文字とグラフや絵を使った情報の提示の場面はいろいろあります。
これらを共通して使用する骨格の部分と、肉付けをする部分に、分けて組み合わせを変える必要があります。表現方法も変えなければなりません。 それぞれを、一から手作業でしていたのでは、時間がかかり過ぎます。
パソコンのワープロ機能を使えば、部分的に切り取ったり、別のページに張り付けたり、活字の大きさや書体を変えたりが、簡単に出来ますから、基本文書を作れば味付けはとても楽になるのです。
営業活動は、お客様を理屈で動かすのでは無く、感性に訴える面を多く含んでいます。誠意や真剣な取り組みを感じていただくことは大切なのですが、自分の使える時間も、お客様に割いていただける時間も、共に限られているのです。
同じ仕事をするのに必要な時間がもし半分で済むようになれば、その人の働きは二倍になります。今それはパソコンを使う人と使わない人の相違です。
第9章 これからの証券営業
(1)社会状況の変化とは
(部分抜粋を掲載)
営業活動とは、ある社会環境の中で、対象となる相手に働きかける仕事です。
社会環境は、そこに生きている人達の、歴史や文化に基づく生活習慣や思考習慣、さらに国の国際的な地位、政治と経済、大きくは気象条件のなど、総てを背景として構成されています。歴史を見ますと、この社会環境が変化をするのは、様々な原因によりますが、技術革新によって引き起こされることが、しばしばあります。
技術革新についていえば、太古に道具の素材が石から銅へ、さらに鉄へと変化したときも、大きな社会環境の変化を招いたに違いありません。稲作という農業技術革新によって、弥生時代が始まりそれ以前の縄文時代を変えて行ったことは、定説となっています。
今日では、すでに様々な先覚者の指摘しておられるように、電子情報についての技術革新が、世界を変えようとしています。
電子情報の技術革新による社会状況の変化は、経済活動からの影響によって拡大されます。より多い利益を求め、あるいは利益の減少を防ぐための動きは、連鎖した動きを引き起こしていきます。
社会環境の変化は、それまでの制度や規則の見直しを迫ります。
そしてその見直しが行われると、変化はさらに一斉に拡がるのだと考えられます。
人類の歴史の上で、何度となく繰り返されて来た社会状況の変化は、その原因は地域によっての相違はあっても、そこに生きる人間には同じ様な影響を与え、同じ様な反応を起こさせるのだと思います。
高い水準にあるといわれている日本の個人貯蓄は、これからどの様な変化をして行くのでしょう。再び中央集権による国家総動員法のような、新しい仕組に再編成される動きになるとお考えの方は少ないでしょう。
全体の流れは、中央集権とは対極にある、分権を求めているようです。
国民各層の個々の人の必要に応じた、様々なサービスを、可能にする方向が求められるているのではないでしょうか?
技術革新に起因する、このような広範囲の大きな社会状況の変化は、ある部分では急激な変化をしても、全体としてはゆっくりと進むようです。そのために変化に気が付き、行動を始める人の数は、最初は少なく、次第に拡がり、ある時点を超えると、一気に拡がるというパターンを持つようです。
(2)証券営業の変化への対応
(部分抜粋を掲載)
証券営業もまた、これらの社会状況の変化に、対応しなければならないのは明らかです。どの角度からどの様な方法で対応して行くのか、会社規模の大小を問わず、これからが正念場になるでしょう。
制度や規則の変化も、次々に起こる可能性があります。
会社としても個人としても、変化を先取りする勇気が、値うちを増すように見えます。変化は、対応の仕方によってはピンチとなり、あるいはチャンスとなることを、歴史は教えてくれます。
その新しい証券営業の世界で、重要な戦力として期待されるのが、パソコンであり、マーケティング理論であると、私はしばらく以前から考えています。いずれは、その双方の機能を使わない営業活動は、ありえない段階にまで進むのではないでしょうか。
そのための具対的な手がかりを、これまでの章の中で述べさせていただいたつもりです。情報力を高めて、的確な対象に営業活動を効率的に行う。
この当り前のことを、パソコンと言う道具を使いこなすことによって、個人のあるいは会社としての能力を、飛躍的に増加させようという提案ともいえます。
電子通信を利用した営業活動も多彩に拡がると思います。
アドバイザー業務などで、独自の情報サービスを目指す人も出て来ました。
専門化と分業化が進むと、業務の外部委託も増えるようになります。
店舗の持つ意味合いは、必ず変化して来るでしょう。
新しい道具をうまく使いこなすことを考えて、いち早く実践することが、極めて重要なのだと考えています。
(3)規制緩和とコストとの戦い
(部分抜粋を掲載)
「原則規制、例外自由」とまで揶揄されるほど、政府による規制の多い日本の状況は、海外からだけではなく、国の中からも緩和を求められるようになりました。
国民を守り、国の国際的な立場を強くするために行われてきた施策が、今や住専問題の処理を税金で穴埋めしようとする案や、行政改革が進まない内に、消費税を引き上げようというような動きによって、国民の政府と行政に対する信頼を大きく揺るがせています。
この内外価格差を、解消あるいは緩和しなければ、これまでの仕事が続けられない人達と、逆に緩和されると、これまでの仕事が続けられない人達とのバランスをどう取るかが、これからの政治の問われている能力です。
他人事ではありません。内外価格差の原因の一つには、労働コストも挙げられているのです。年功序列と終身雇用を旗印として、集団への忠誠を柱として来た人事制度も、コストに見合った生産性を、求めざるを得ない状況になります。
証券界でも、長い不況の中で、リストラの中心は人員の削減でした。
年俸制度の導入も始まっています。社員営業への一貫した傾斜から、歩合外務員採用への回帰も一部に見られます。雇用形態の変化は、これからさらに進行すると考えられます。
その一番の理由は、株式売買委託手数料の自由化問題の進展にあります。これが唯一の理由ではありませんが、最大の問題ではあります。
ここからの人件費コストの低減には、単なる頭数の減少ではなく、生産性を高めるための競争と、固定費を変動費化するための試みが、中心となるように思われます。
会社も個人も自己能力を高めて、よりよい顧客サービスを行うための、より一層の激しい競争が行われるようになると考えます。
(4)夢ではなく起こりそうなこと
(部分抜粋を掲載)
電子情報の技術革新による変革は、序曲を終えてこれから主題に入ります。
証券業界でも、パソコンの一人一台の利用を目指す会社は増加するでしょう。
言われたことを言われた通りにする営業では、この先は生き残りは難しくなるでしょう。たとえ、雇用は確保されたとしても、収益貢献度への評価による賞与の配分格差が拡大したり、ベースアップや定期昇給額が縮小して、能力や実績に伴う昇給が、逆相関として拡大して行くと考えられます。
顧客である投資家の年層も変化して行きます。次第に実利を重視して、情報サービスの巧拙と、内容による評価と選別は、より厳しい方向に向かうと思われます。
しばらく以前から、「セブン・イレブン」といわれた証券営業のサービス時間帯も、これからの議論は、24時間365日の営業サービスをどのように実現させるかに向かうでしょう。
分業化と外部委託の仕事は増えます。
営業活動そのものすら外部委託してしまうことも、規制やルールが見直されるに従って行われる可能性すら考えられます。
すでに自由化が進んでいるか、あるいは新しい産業で規制の少ないところで起きている現象は、やがて証券の仕事についても起きる可能性はあるのだと思わなければなりません。
夢にも思わずにいたことが、夢ではなく起こりそうな日が、すぐそこまで近づいているのです。
おわりに
(部分抜粋を掲載)
さきに出版した「証券営業 理念と技術」の中では、古くから伝わる業界の伝承や、先輩・上司からの指導と教育をまとめて、若い方々にお伝えすることに、主眼をおいて書かせていただきました。
そこで今度は、最新の理論とテクノロジーをご紹介して、古典的商法が、いま最も新しい手法と結び付いて甦ってきていることをお知らせし、営業のお役に立てていただこうと考えて再び筆をとることにいたしました。
最新のテクノロジーはコンピューターであり、この機械の活用を前提とした、最も新しい「データベース・マーケティング理論」が、米国で成功を収め、注目を集めています。わが国よりも先に物の満ちあふれた米国では、やはり新しい営業技法が、発達と普及の進展著しいコンピューターを活用して登場してきたのです。
若さは無限の可能性を秘めています。あなた方の競争相手は社内ではありません。
新規参入で規模の拡がる、国内業界だけでもありません。
海の向こうには向上心を持つ若者が、数多くひしめいています。あなたの将来を切り開き、よりよい生活を作り出すのは、あなた自身の力にたよるしかありません。
この本を手がかりとして、どんどん新しいことに挑戦する営業を展開して下さい。
必ずご自分の業績に反映してきます。グループで挑戦することもよいでしょう。会社ぐるみで挑戦するようになることもあるかも知れません。
しかし、あなたがまず取り組むことが、一番必要です。新しい方法は、早く始めた人ほど有利なことが沢山あるのです。
時間の有効活用と、コンピュータへの個人での投資をおすすめします。
パソコンも、仕事や個人の生活にどのように使えるのかを、イメージできると使ってみたくなるものではないでしょうか?
コンピューターに詳しい理工系の人にとっては、何でもないことでも、私のような文系の人間にとっては、なかなか理解できないことは数多くあります。しかしコンピューターに詳しくなって、そのことを職業にするのではなく、コンピューターを自分の仕事に利用してみようという角度から考えれば、これまでの事務作業に比べて、パソコンは素晴しく便利な道具に進化して来ているのです。
本書を最後までお目通しいただきありがとうございました。
私のように素人として、これからパソコンを使おうとする方々のために、本書がいささかなりともお役に立つことを心から願っております。
小野 喜也 (おの よしや)
1935年 昭和10年、東京都 深川生れ。
1958年 昭和33年、慶応義塾大学 経済学部卒業、(体育会 柔道部)
大和証券株式会社に入社。以後、債券部、金融法人部、京都支店、
事業法人部、秘書室、名古屋支店、金業務部に勤務。
1983年 昭和58年、大和証券投資信託委託株式会社に移籍。
業務部長として、全国の証券会社を通じて投資信託の募集にあたる。
取締役、常務取締役を経て、現在監査役。
1995年 「証券営業 理念と技術」を文園堂出版より発表。
パソコン証券営業 勝つためのマーケティング理論
1996年10月6日 発行
著者 小野 喜也
発行所 文園堂出版 〒167 東京都新宿区築地町7
印刷 文園堂印刷